経営戦略論

マッキンゼーの7Sとは?7Sモデルの適用事例

マッキンゼーの7Sとは 7Sモデルの適用事例

マッキンゼーの7Sとは、組織の総合的な改革において、重要な7つの要素を整理したフレームワークです。1980年代にマッキンゼー・アンド・カンパニーが提唱し、ビジネス戦略や組織改革において、企業の成功に欠かせない要素として広く認知されています。

マッキンゼーの7S

この記事では、経営戦略フレームワークとしてよく利用される7Sについて、事例を交えて解説していきます。

7Sフレームワークを構成する7つの要素

7つのSは、以下7つの要素から構成されています。

  • 戦略(Strategy)
  • 組織(Structure)
  • システム(System)
  • 価値観(Shared Value)
  • スキル(Skill)
  • 人材(Staff)
  • スタイル(Style)

この中で、戦略・組織・システムの3つをハードの3S、価値観・人材・スキル・スタイルの4つをソフトの4Sといいます。

優れた企業は、これら7つの要素は互いに補完しあい、強めあいながら戦略を実行しています。

たとえば、企業の戦略が、システム(制度)や組織の構成につながります。それらが、企業の価値観を生み出し、必要な人材、スキルを決定づけ、組織特有の文化(スタイル)を醸成するのです。

あるいは逆に、スキルや人材から新たな戦略が生まれてきます。

7つのSについて、さらに詳細を解説していきます。

戦略(Strategy)

企業が取り組むビジネス戦略や方針を表します。

企業のビジョンやミッションなど、長期的な目標に合わせた方針を策定することが重要です。

組織(Structure)

企業の組織構造を表します。

役割分担や職務範囲、上下関係や決定権の委譲など、組織の仕組みを構築することが重要です。

システム(System)

企業が利用する情報システムや、業務プロセスなどを表します。

業務の効率性や品質向上を図るため、適切なシステムを導入することが必要です。

価値観(Shared Value)

企業が共有する価値観や理念を表します。

企業が追求する社会的な責任や、社会への貢献など、企業が持つ使命感や目的を共有することが重要です。

スキル(Skill)

企業が持つ技術や知識、専門能力などを表します。

製品・サービスの品質向上や、新規事業開発など、企業の成長に不可欠なスキルを持つことが求められます。

人材(Staff)

企業が抱える人材を表します。

人材採用や育成、配置など、組織に必要な人材を確保することが求められます。

スタイル(Style)

企業の経営者や管理職のスタイルを表します。

企業文化や風土、コミュニケーションなど、組織の雰囲気や風潮を形成することが重要です。

7Sフレームワークの事例

7Sフレームワークを実際にどのように活用できるか、紹介していきます。

製造業の7S事例

製造業の7Sとして、以下の事例があります。

安定成長の時代
戦略 製品の品質を高め、顧客満足度を向上することを目的に、品質向上のための取り組みを推進する。
組織 生産部門、品質管理部門、販売部門、管理部門などの組織構造が明確になっていて、各部門の役割分担や業務プロセスが明確にする。
システム 生産プロセスの効率化や品質管理の強化を目的に、生産管理システムを導入する。
価値観 顧客満足度を最優先とし、製品の品質向上やサービス向上に注力することを共有価値観とする。
スキル 新製品の開発を推進するため、技術部門に研究開発チームを設置し、製品の技術力向上を目指す。
人材 品質管理部門には、品質管理の専門家が配置されており、品質管理に精通したスタッフが常駐いる。
スタイル 企業文化として、「品質第一主義」を掲げており、品質向上に向けた取り組みが積極的に推進されている。

市場環境に合わせた7Sの変化事例

7Sは市場環境に合わせて変化させることも重要です。

たとえば、市場が安定成長していた時代にプロダクトアウトの考え方で成功していた企業が、市場規模の飽和・規制緩和の影響で、マーケティングを戦略の要に据える必要がでてきた場合を考えてみます。

安定成長の時代 市場飽和の時代
戦略 プロダクトアウト
(作れば売れる)
マーケティング重視
(顧客をよく見る)
組織 機能別組織
(各人が持ち場をきっちりこなせばよい)
製品別組織+顧客別組織
(顧客に対してベストな商品提案をしていく)
システム 管理重視、年功序列
(上からの命令を着実にこなす人が評価される)
エンパワーメント型
(担当者に権限委譲。権限委譲できる上司や、自ら考え動く担当者が評価される)
価値観 いいものを手ごろな値段で作ることが大事 顧客を見ることが大事
スキル コスト管理能力 マーケティング能力
人材 製造に強い人材が多い
(営業は接待だけしていればOK)
顧客の要望を汲み取れる営業と統括するマーケティング能力のある人間が必要
スタイル 官僚主義的、内向き志向、社内政治重視 顧客を起点とした行動規範

このように整理することで、外部環境の変化によって7Sをどのように変化させていくべきかが明確にわかるようになります。

ソフトの4Sはハードの3Sよりも変化させにくい

7Sの中で、ハードのS(戦略、組織、システム)は企業努力によって比較的短期間で変更できます。

しかし、ソフトのS(価値観、スキル、人材、スタイル)を変えるのは容易ではありません。

実際に上で挙げた事例を見ても、「官僚主義的、内向き志向、社内政治重視」というスタイルを「顧客を起点とした行動規範」というスタイルに突然変化させるのが難しいことは間違いありません。

これだといくら戦略方針を転換させたとしても、組織全体が効果的に戦略を実行するのは難しいでしょう。

つまり、ソフトの4Sは戦略遂行の強力な推進剤になる一方で、変化が容易ではないので戦略遂行の妨げにもなってしまうのです。

外部環境が変化したときには、ハードの3Sを変えるのはもちろんですが、それらを支えられるようにソフトの4Sを丁寧に変化させていき、最終的にはスタイルを戦略遂行にマッチしたものに変えて根付かせることが重要になります。

まとめ

以上、7Sフレームワークの解説でした。

  • マッキンゼーの7Sとは、組織の総合的な改革において、重要な7つの要素を整理したフレームワークで、ビジネス戦略や組織改革において、企業の成功に欠かせない要素として広く認知されている。
  • 7Sの構成要素は、戦略(Strategy)、組織(Structure)、システム(System)、価値観(Shared Value)、スキル(Skill)、人材(Staff)、スタイル(Style)。
  • 7Sの中で、ハードのS(戦略、組織、システム)は企業努力によって比較的短期間で変更できるが、ソフトのS(価値観、スキル、人材、スタイル)を変えるのは容易ではない。

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