感度分析とは、ある要因を変化させたときに、結果にどのような影響を与えるかを分析することをいいます。DCF法を用いた株価分析をすると、企業の将来の財務指標(要因)の変化が理論株価(結果)にどのように影響するかがわかります。感度分析をすると企業によってどこが強みで、どこが弱みなのかわかります。また、何を改善すればFCFが伸びる(=株価が上がる)のかもわかります。感度分析からわかることは次のようなことです。
・売上や利益の成長が株価にどの程度見込まれているかわかる。
・逆に企業に悪影響となるニュースが出たときFCFがどれだけ下がるかを
見積もることで、株価がどの程度下がるかわかる。
「ある企業の売上高が前年比30%(過去最高)の伸びとなったが、在庫回転率の悪さでFCF自体はむしろ減っている」
このような企業では売上高を伸ばすより、在庫回転や利益率などを見直したほうがFCFに与える影響が大きいことがわかります。これでは売上高が伸びたからといって素直に喜べません。
「ある企業が過去最高利益を出したが、運転資本が大きく増加している。」
この場合、利益の増加がFCFに好影響を及ぼしますが、運転資本の増加がどの程度FCFに悪影響を与えているか見る必要があります。場合によってはFCFが減少する場合もあります。
前のページで出した花王を例にしてもう少し具体的に考えていきます。
花王の将来予測は下の表を基準とします。 (単位は百万円、ただし株価は円)

※売上高成長率が変化する場合
売上高成長率を変えるというのは私の銘柄分析で実施している方法です。基準例では売上高成長率が1.0%でした。これが5.0%に成長すると下のようになります。

他の財務構造が変わらずに売上高成長率するとFCFが増加します。この例では算定株価は基準よりも350円程度上昇が見込めることがわかりました。先ほどの例のように財務構造によっては売上高の伸びがFCFの伸びに連動しない場合もあります。
※利益率が変化する場合
企業が今後リストラ等による収益構造の改善の余地があると判断した場合に有効な方法といえます。ここでは売上高EBIT率を変化させて検証します。

収益体質が変化して利益率が上昇した場合も当然FCFが増えるので算定株価は上昇します。この例では算定株価は200円程度上がっています。
※在庫回転率が変わる場合
何らかの事情で在庫の回転率が変化した場合に及ぼす影響を見てみます。

この場合、在庫回転率の悪化は算定株価に60円程度マイナスに働きました。
※設備投資額が変化する場合
設備投資額を増額する方針を打ち出した場合のFCFを見てみます。

この例では設備投資額が毎年90億円程度増えた予想です。これにより算定株価には350円程度影響を及ぼしています。ただし設備投資額を増やすということはそれに連動して売上高や利益、減価償却費が増えていく可能性があります。設備投資額だけが増えるというのは稀な例だと思います。
●感度分析の結果
この例における結果をまとめると次のようになります。
・売上高の成長が4%変わると算定株価は350円上昇する。
・利益率が1.4%改善されると算定株価は200円上昇する。
・在庫回転月数が0.5ヶ月増えると算定株価は60円減少する。
・設備投資率が1.0%増えると算定株価は350円減少する。
例えば花王の株価が2500円だとすると、売上高の成長が見込めなくても利益率改善の余地ありと見れば株式に投資するという判断ができます。実際は社会情勢や今後の企業方針を織り込んで様々なパラメータを動かしながら企業価値(株主価値も)分析していくことになると思います。
●最後に
この感度分析の例は花王という企業を全社的に評価しているに過ぎません。さらに詳細な分析を行うとすれば、企業の各セグメントの感度分析を実施していく必要があります。時間がある方はやってみてはいかがでしょうか・・・。
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