IRRとは複利計算に基づいた、投資に対する収益率(利回り)を表します。IRRは、NPVの累計がゼロになる割引率として求められます。
IRRは、日本語で内部収益率とか内部利益率といった言い方をします。IRRはDCF法によるNPVと並んでよく使われる投資判断指標です。
言葉だけではわかりにくいので、具体例を挙げてみます。
以下のような投資案件AとBがあります。Aは100万円を設備投資したときに得られるキャッシュを表します。
(単位:万円)
|
現在 |
1年目 |
2年目 |
3年目 |
4年目 |
投資案件A
(設備投資) |
-100 |
20 |
20 |
20 |
52 |
投資案件B
(債券) |
-100 |
3 |
3 |
3 |
103 |
Aでは毎年20万円のキャッシュを回収でき、4年目のキャッシュ回収時点で設備を32万円で売却します。
Bは同じく100万円を3%のクーポンの付いた債券に投資したときに得られるキャッシュを表します。Bでは4年目の金利を得た時点で、元本を回収します。
さて、表を見ると、どちらの投資案件も得られるキャッシュの総額は112万円で同じです。ここだけに着目すると、どちらに投資しても優劣がないと判断できます。
しかし、DCF法のページの冒頭でも述べているように、お金には時間的な価値があります。したがって、投資案件A、Bは同じ時間軸で比較しなければ、優劣の議論ができません。
それでは同じ時間軸で比較したとき、投資案件A、Bで獲得できるキャッシュはいくらになるか計算してみます。ここでは計算を簡単にするために、投資案件Bのクーポン3%を割引率として考えます。
※投資案件A(設備投資)の場合
キャッシュ総額(現在価値)
=-100+20/(1+0.03)+20/(1+0.03)2+20/(1+0.03)3+52/(1+0.03)4
=102.8万円
※投資案件B(債券)の場合
キャッシュ総額(現在価値)
=-100+3/(1+0.03)+3/(1+0.03)2+3/(1+0.03)3+103/(1+0.03)4
=100万円
時間軸を同じにすると投資案件Aの方が、2.8万円も得をすることがわかります。
キャッシュの総額として2.8万円得をすることはわかりましたが、これを利回りで見るといくらどの程度違うのでしょうか?ここでIRRの計算が必要になります。IRRは次の式から計算します。(rはIRRを表します)
※投資案件A(設備投資)の場合
-100+20/(1+r)+20/(1+r)2+20/(1+r)3+52/(1+r)4=0
r = 3.98%
※投資案件B(債券)の場合
-100+3/(1+r)+3/(1+r)2+3/(1+r)3+103/(1+r)4=0
r = 3%
この結果から、利回りで見ると、投資案件Aの方が0.98%高いことがわかります。
ちなみにこの場合の割引率とNPVの関係をグラフで表すと、次のようになります。

それぞれ横軸と交わるときの割引率がIRRを表します。この場合、割引率がいくつになっても投資案件Aの方がNPVが大きいことがわかります。
(補足)
この例では、投資案件A、Bともに将来のキャッシュが確実に予想できるという単純化した前提で計算をしました。しかし、実際には投資案件Aのような設備投資には投資案件Bのような債券と比較して予定のキャッシュを回収できないというリスクが大きくなります。
そのため、通常は投資案件Aの現在価値計算では、投資案件Bよりも大きな値で割り引いて求めます。したがって、IRRの基準も3%より厳しく見る必要があります。
IRRは、投資利回りの観点から議論できるメリットがありますが、次のようなデメリットがあります。
@IRRには利回りの観点しかないため、投資規模が考慮できない。
AIRRを算出する際に、期間を明示するルールがない。
BIRRは解が出ない場合がある。
(下図参照)
C途中の期に割引率(WACC)が変化するような場合、IRRの値の評価ができない。
(多大な負債を使ってM&Aをして、買収後に事業を売却するなど、資本構成が
大きく変化するような場合)
BのIRRの解が出ない場合とは、次のようなときです。このように期の途中にマイナスが出てしまうと解が出ない場合があります。
(単位:万円)
|
現在 |
1年目 |
2年目 |
3年目 |
4年目 |
| 例1 |
-5 |
8 |
8 |
8 |
-25 |
| 例2 |
-15 |
8 |
-5 |
5 |
-5 |
これをグラフで視覚化すると次のようになります。

IRRには上記のようにいくつかデメリットがあるので、NPVと合わせて総合的に判断をする必要があります。一般的には、NPVとIRRのどちらを見るかの分かれ目には、次のようなものがあります。
@資金の制限が少なく、単一のプロジェクトを評価する場合は、
NPVを重視して判断する。
A限られた資金を複数の事業に分配することを考える場合は、
IRRを重視して判断する。
IRRの計算を手計算でやろうとすると、かなり複雑で答えを簡単に出せません。しかし、エクセルを使うとIRRの計算が非常に簡単にできます。上の投資案件Aの例で見ると、-100、20、20、20、52の5つの数字を選択してIRR関数を使えば瞬時にIRRが求められます。
|
ファイナンスの原則
FCF
DCF法
割引率(WACC)
β(ベータ)
アンレバードベータ
IRR(内部収益率)
残存価値の算出方法
WACCの限界
APV法
最適な資本構成
負債の節税効果
配当政策
配当政策と株価
自社株買いと株価
株価を上げる投資
ポートフォリオとリスク分散
ポートフォリオとリスク分散2
DCF法でPJを比較
DCF法でPJを比較2
差額原価収益分析
|