2008年04月15日
 ■ DCF法のメリット

先日、ご紹介した本「会社の値段 (ちくま新書)」に、DCF法のメリットは、多数の変数を変化させて精緻に企業価値を計算できることではなく、ある企業価値を多数の変数の変化から論理的に説明できるということだと書いていました。つまり、DCF法でロジックを固めて答えを出すのではなく、答えありきの状態からDCF法でロジックを後付けすることもできることだというのです。

企業買収の値決めは、買収する側とされる側の双方が、計算された企業価値にお互いが納得できるかどうかでラインで決まるということを聞いたことがあります。その納得感をEBITDA倍率やPER、DCF法で得たNPVなどの指標から引き出すというわけですが、「会社の値段」では、その中でもDCF法は変数が多いので、割と納得感を引き出しやすいということを言っているのだと解釈できます。

実は、私もDCF法を後付けでの説明に使うという感覚には同感できます。私自身、DCF法を使って投資判断を仰ぐ資料を作ることは多いのですが、結局自分がやりたい方向に向かうように、”それなり”の数字を作って、その数字を納得させられる論理武装をするからです。

買収する側も買収される側も、投資案件の承認をもらう側も承認する側も、互いに人同士。結局のところ重要なのは納得感。DCF法は、その納得感を引き出せる要素が少しだけ多いところにメリットありというわけです。



2007年05月01日
 ■ 経営指標の変遷 最近は事業リスクを含む指標が主流に

「青山マネジメントレビュー」の第11号に、最近は事業リスクを含む経営指標が重視されているという話が載っていたので少し紹介します。

80年代までは企業が重視する経営指標は、売上高や営業利益、経常利益といった収益の規模を示す指標が重視されていたのですが、90年代に入ってROEやROA、ROICといった資本効率を示す指標が重視されるようになってきたそうです。(私自身もROICに注意を払っています。)

投資家の中でも、これらの指標を重視して投資をしている人が非常に多く、今や四季報や株式情報サイトでは必ず出てくる指標となっています。

そんな中で、最近はリスクを含む指標を見る例が増えきているというわけです。その例として株主価値やEVA、RAPM(※)などがあるそうです。

ROEやROA、ROICがある期間の効率性を示す値であるのに対し、株主価値、EVA、RAPMいずれも事業リスクを反映した投資家の要求リターンである「資本コスト」を取り入れた指標です。投資家の影響力が強くなってきていることが、こうしたリスクを織り込んだ指標を重視させている要因だそうです。


こうしてみると指標は年々複雑になっていて、個人投資家が厳密に計算するのが大変になっている気がします。ただこうした指標が経営指標として活用されている以上、投資家としても厳密な計算はできなくとも、指標の意味するところを十分に理解しておくことが重要だと思います。


(※)RAPM(Risk Adjusted Perfoemance Measurement)とは、事業リスクの大きさに見合った収益性を測定するための指標で、RAPMの代表的指標としてSVA(リスク調整後付加価値=純利益−必要株主資本×ハードルレート(WACC)があります。



2007年03月21日
 ■ ファイナンス理論 自社株買いと株価の変動

最近、財務とか会計の話に対して感度を高めているのですが、面白い記事を発見したので紹介します。

第4回 170億円の時価評価が125億円〜クレイフィッシュの企業価値の低迷とファイナンス理論〜

ファイナンスの理論では、自社株買いをしても株価は上がらないということになっています。なぜなら、会社の資金を投入して、株式を購入するので、株主価値と発行株式数が同じだけ低下するためです。

しかし、それは理論上の話で、往々にして自社株買いというのは投資家の心理に影響を与えて株価変動の要因となるようです。例えば、「会社が自社の株を買うということは、会社の考える価値より株価の方が低いからでは?ならば今なら買いかもわからない」というような感じです。

さて、先ほどの記事、後半の部分で自社株買いで株価が上がるケースを取り上げていますが、これも面白いですね。経営能力の疑わしい経営者が現金を持っていることで、現金を保有していること自体のリスクが大きいととらえられて株価が低くなっている。それを自社株買いすることによって、適正な株価に戻るというケースです。

理論とそれに基づく前提を考え、その前提が崩れたときにどういうことが起こるのか?そんなことを考えてみるとファイナンスも非常に楽しいですね。



2007年03月10日
 ■ β(ベータ)の視覚化

最近、財務の勉強を再開したのはすでにお伝えしたとおりですが、財務系の新ページを作るとともに、既存ページのパワーアップも図っていきたいと思います。

その第1弾として、β(ベータ)のページをパワーアップしました。

β(ベータ)とは、個別株式の変動と株式市場(日本の場合、通常はTOPIX)の変動がどの程度連動しているかを表した数字で、マーケットリスクを測るための指標です。β(ベータ)は、企業価値を算出する上でも重要な指標になります。

そのβ(ベータ)を、視覚的にわかりやすくなるような解説を付け加えました。結局のところ、β(ベータ)
とは、個別株式の変動と株式市場の変動を回帰分析した際の傾きだというわけです。こうして散布図にして視覚化すると、自分が使っているβ(ベータ)という指標がどんな前提にもとづいて計算されているのかがわかったよいですね(結局のところは最もそれらしい値をとっているにすぎないわけです)。

参照:β(ベータ)



2007年03月06日
 ■ ファイナンス 選択権を含むPJの評価

実は2年くらい前に、リアルオプションという概念を学んだのですが、最近になってやっと、意味するところや計算方法がわかってきた気がします。

少しリアルオプションについて解説します。

通常のPJの評価では、PJに投資をしたときと、しないときのキャッシュフローを計算して、その差額からPJに投資すべきかどうかを判断します。

このPJの投資には参加権が必要で、モタついていると参加権を競合に取られてしまうようなことが考えられる場合にリアルオプションが威力を発揮します。

参加権というオプションがつくことで、

1.参加権だけ先に購入して、後でPJ投資の判断をする。
2.参加権購入と同時にPJ投資に投資をする
3.PJに投資しない

というように選択肢が拡大します。

さらにここで競合の参入確率などを考慮に入れると参加権をいくらで購入すべきか?競合の参入が確実にわかる情報の価値はいくらか?といったことをリアルオプションの考え方で導くことができます。


このリアルオプションを考えるモデルとして、ディシジョン・ツリーというものがあります。近々簡単な例を本サイトのコンテンツとしてアップしたいと思います。



2007年02月12日
 ■ 資本コストから考える新規事業開拓による株価増減

久しぶりにファイナンスの話を書いてみます。

本サイトに資本コストについての記述をしています。これは、株式による資金調達と借入による資金調達にかかるコストのことをいいます。理論的には資本コストが大きくなると、株価は下がります。

詳細 : 資本コスト(WACC)

この資本コストと株価の考え方がわかると、つぎような状況で株価がどう動くかを知る手がかりになるわけです。

「業績が停滞ぎみのある無機材料系のメーカーが、今伸び盛りのIT関連事業に進出する」

この場合、一見すると伸び盛りのIT関連事業に進出ということで株価は上昇側に反応するものと思ってしまいます。しかし、資本コストの観点から見るとどうなるでしょうか。

停滞ぎみとはいえ、無機材料製造の事業リスク(上下変動)は非常に小さいと考えられます。一方で、IT関連産業は伸び盛りとはいえ、事業リスクは非常に大きいと考えられます。資本コストはリスクが小さいよりも大きいほうが高くなるので、この会社がIT関連事業に進出すれば資本コストは上昇します。つまり株価は理論的に下がる方向にいくわけです。(もちろん、新規事業開拓によって、将来見込まれる収益が資本コストの増加を打ち消すほど大幅に増加する場合は、株価上昇要因になります。ここでは資本コストの動きのみに着目しています)


ちなみに、この場合、理論的な数字上の話だけでなく、投資家心理からしても株価は下落の要因を秘めています。例えば、IT経験のない会社がIT関連事業に資本を投入するのであれば、投資家はそこから資金を引き上げてITを専門にしている会社に預けた方がよりリスクを抑えながら同程度のリターンを得られると考えることができるからです。



2005年08月15日
 ■ 夢真HDが日本技開に仕掛けたTOB

このTOBに関するニュースが、日経新聞で連日のように取り上げられています。昔あったIT企業がラジオ局に仕掛けた買収劇に比べるとマスコミへの露出は少なく、ひっそりとしたものです。

買収防衛策を持つ企業に対するTOBは国内で初めてのケースだそうで、一部では注目されていたそうです。日本技開が買収防衛策で株式分割したことで、株価が大きく高騰しています。

前にも言いましたが、こういう一連の動きを見ると、他社から買収したいと思われるような企業に投資するのが、利益を生む近道のようにも見えます。


ご参考までに、事のいきさつを時系列で整理してみました。
・夢真(ゆめしん)ホールディングスは日本技術開発に敵対的TOBを仕掛ける。
・日本技開は防衛策として1:4の株式分割を実施する事を発表
・夢真は東京地裁に分割差し止めを請求するが却下。
・日本技開の株価高騰
・エイトコンサルトが日本技開に友好的TOBを仕掛ける。(ホワイトナイト)
・夢真は日本技開の株式の過半数取得には至らず。
・夢真は日本技開とエイトコンサルタントとの3社提携の道を探る。





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