いくら綺麗な戦略を立案できても、実行場面で組織が機能しなければ、絵に描いた餅に終わってしまいます。そのため、戦略立案においては、その実行場面を具体的に描くことが重要になってきます。そのときに重要となる要素のひとつがKPI(重要業績指標)の設定です。
■KPI
KPIとは、戦略目標の実現度合いを図るための指標のことです。経営者は適切なKPIを決めて、それを日次あるいは週次などで管理して、経営状態を把握する必要があります。従業員は、このKPIを意識して働くことが求められ、KPIが報酬に連動する場合も多くあります。もちろん、KPIはビジネスの種類や部門毎によって異なります。
■KPIの種類
KPIには大きく3つのタイプがあります。
1.インプット
作業時間や作業回数など、
2.プロセス
組立時間や注文受け時間など
3.アウトプット
販売台数や利益など
インプットで管理するほど、堅いマネージメントができ、アウトプットで管理するほど、イノベーションが従業員の裁量が増えて起きやすくなります。
したがって、一般的に工場の作業者は、インプットで管理して、開発・研究部門はアウトプットをKPIにすることが一般的です。(逆に作業者にイノベイティブな行動をとられても困るし、研究者を実験回数のようなインプットをKPIにすると、おそらく組織として機能しないでしょう)
このように、3つの種類から適切なKPIを選ぶことは非常に重要ですが、それだけでは十分ではありません。もうひとつ重要なことは、設定したKPにより、従業員が具体的な行動をイメージできるかどうかです。
(次回に続きます。)
本サイトでプロスペクト理論というものを紹介しています。プロスペクト理論とは、簡単に言うと人は利益よりも損失の方を重大に捉えるという理論のことです。(参考ページ:プロスペクト理論とは)
さて、この理論ですが、実はセールストークに応用できるのです。
よく、「○○を買うとこんなにお得」とか、「今ならキャンペーン中で△△が×円引きです」といった表現があります。これは購入することによる利得を訴えるトークで、常道のセールストークです。
ところが、これらの表現にプロスペクト理論を応用するとどうなるのか。
「○○を買わないとこんなに損ですよ」、「もうすぐ△△キャンペーンが終わるので、今買わないと×円引きになりません」という表現になるわけです。
いかがでしょうか?何となく後者の方が決断を促されているような感覚に陥らないでしょうか。これは、人間が利益よりも損失に対して敏感であるというプロスペクト理論によるものなのです。
ただ、後者のトークは、あまり連呼すると相手が不快な気分になってしまうことに注意が必要です。(逆に前者の肯定的な言い方は、あまり不快にならないので街頭の呼び込みなどには向いています。)
企業の人材が有効に機能するためには、彼らが元々持っている能力を十分に発揮してもらうだけでなく、適切な学習プロセスが必要になってきます。そこで、クリス・アージリス(ハーバード大学)が提唱する2つの学習プロセスをご参考までに紹介します。
■シングルループ・ラーニング
シングルループ・ラーニングとは、ある目標を定めると、その目標に向かって行動し、実際の結果との差異をチェックし、再びその目標を達成するための行動目標を定めるというループで成り立っている学習プロセスです。
■ダブルループ・ラーニング
ダブルループ・ラーニングとは、目標を定め、行動し、結果との差異をチェックし、目標達成のための新たな行動目標を立てるというループの他に、そもそもその目標は妥当なのかという目標自体を見直すループをチェックの中に盛り込んでいる学習プロセスのことを言います。
■2つの学習プロセスが醸成される例
例えば、企画部門と実行部門を明確に区分すると、前者はダブルループ、後者はシングルループの思考が染み付きます。また、職務を細分化すればするほど、各セクションにはシングルループの思考が染み付きます。あるいは、行部門により多くの権限を委譲して、企画までさせようとすると、実行部門の人材にはダブルループ・ラーニングのプロセスが染み付きます。
■まとめ
どちらがより優れているということはなく、この2つのプロセスをバランスよく身につけた人材・組織が成功すると考えられています。シングルループだけでは言われたことしかできない組織になり、ダブルループだけでは推進力が生まれにくいからです。
JAL再生の話が、ニュース・新聞紙上を賑わしていますが、今回は企業の落ちぶれ度と、再生のやり方について書いてみます。
■凋落の初期であるほど再生は難しい
再生初期の場合、社員(もしくは経営幹部)は危機感を抱かない上、目先の既得権益にしがみついてしまい、下手に再生しようとすると、彼らが抵抗勢力になってしまうため、再生がうまく進まないケースが多くあります。人間誰しも、現状が安住状態であれば、それを無理に変えようとはしないからです。
実は、客観的に財務状態を見れば、やばいというのはわかるにも関わらず、手を打てずに落ちぶれていくのは、上述のように、内部人材が再生に向けて動こうとしないケースがほとんどなのです。
■一旦、底まで行けば改革を推進する力は大きくなる
今回のJALのように、法的整理になると、社員を再生に向けて動機づけるのは簡単です。それは、社員がマスコミ報道を見て、嫌が上にも危機感をもつからです。
また、日産も、すでに90年代後半にはかなり厳しい状況に陥っていましたが、社員が本格的に危機感を抱いたのはルノーとの提携や、ゴーン氏の就任のタイミングなのです。
■初期症状でも治す方法はある
初期症状の段階で、将来的な危機に気付いて、手を打ってうまくいっているケースも多くあります。そういう企業は、ゆっくり着実に改革を進めて成功しています。
一般的に再生に与えられた猶予はキャッシュが枯渇するまでと言えます。先の日産の例で言うと、ゴーン氏が3年間のプランを掲げたのは、改革前の財務状態が継続したとすると3年でキャッシュが底をついていたからです。
初期症状の場合、キャッシュ枯渇までにはまだ時間があるので、ゆっくり、じっくりと再生を進めてもよいわけです(逆に早く進めようとすると必ず抵抗勢力の反発に会います)。
このケースで有名なのは、スルガ銀行です。一介の地方銀行でしたが、都市銀行に対して勝ち目無しと見て、リテールに重きを置く戦略をとり、その戦略を長きにわたって実行できるように、長期的な視野で若手の育成に取り組みました。
■まとめ
新聞紙上をにぎわせているJALですが、おそらく天下のJALという驕りが経営陣にも社員にもあったのでしょう。もし、この危機を早めに察知して、危機感を醸成できていれば、今回のような事態に陥ることはなかったのでしょう。
JALの事例を通じて自らを戒めるとともに、他のいわゆる安定企業と呼ばれる会社で同じようなことが起きないかを再度チェックしてみる必要がありそうです。
これまで発表された経営戦略論は、数多くありますが、本書のように戦略論を体系立てて相互関係を整理した本は、他にはなかなか見当たりません。
まず第1部で、経営戦略論を「戦略計画学派、創発戦略学派、リソースベーストビュー、ポジショニングビュー、ゲーム論的アプローチ」の5つに大別。
第2部では、3つの思考法(カテゴリー適用法、要因列挙法、メカニズム解明法)や、第3部で競争、シナジー、選択と集中をテーマとした議論を展開。
著者の背景もあるのか、実務的な要素よりは、学術的な要素がやや強くなっています。しかし、これまで多くの経営戦略論を学んできた方が、それぞれの戦略論のコンセプトとメリット、問題点を比較し、理解を深めるにはうってつけの一冊だと思います。
2月1日号の日経ビジネスに、ポイントの会計処理についての記事が載っていたので、会計処理について基準変更に伴う影響を含めて紹介したいと思います。(ここで言うポイントとは、家電量販店や航空会社が発行しているいわゆる擬似通貨(マイレージなど)のことです)
■会計処理の方法(日本)
日本ではポイントの会計処理の方法は決まっておりませんが、以下のような方法が多数を占めているようです。
<ポイント付与時>
製品の価格を売上として計上して、ポイント分は将来利用が見込まれる額を乗じてポイント引当金として計上します。
<ポイント使用時>
ポイント引当金を戻し入れます。
■会計処理の方法(IFRS)
国際会計基準IFRSでは、次のようになります。
<ポイント付与時>
引当金を計上せず、売上からポイント相当分を差し引き、繰延収益(または前受金)として負債に計上します。
<ポイント>
売上として認識して繰延収益をその分減らします
■IFRSがもたらすこと
この日記でも、2015年頃に日本でもIFRSが導入されるという記事を書きましたが(日経ビジネス IFRS(国際会計基準)の記事を参照)、IFRSが導入されるとポイント発行会社の業績にどのような影響が起こるのか?
上記のような会計処理により、例えば大手の家電量販店では、ポイントを発行した分だけ売上を大きく減らしてしまう可能性がでてきます。また、負債額が今までよりも大きくなる可能性があるので、自己資本比率の低下、それによる銀行借入金利の上昇などの影響もあるでしょう。
日経ビジネスでの指摘のとおり、これだけポイントが氾濫すると、会計基準が変わったときの発行会社への影響は無視できないので、これらの会社の株主は注意深く動向を見守る必要があるでしょう。
一般的に金利が上がると、株価が下がると言われています。それは、金利が上がれば、預金の魅力が高まり、相対的に株式の魅力が下がるためです。では、どのくらい金利が下がると、株価はいくら下がるのでしょうか?
実は、それを理論的に求める方法が、PERやDCF法による株主価値算出式の中に盛り込まれています。
■PER、DCF法
投資家が考える期待収益率をr、成長率をgとすると、PERの場合、株主価値が1/(r-g)と表され、DCF法の場合、簡易式では企業価値がFCF/(r-g)と表されます(DCF法の場合、株主価値を求めるには企業価値から借入金を控除する必要があります)。(詳細は株価の妥当性を判断するを参照ください)
■資金調達コスト
さて、ここでrには加重平均資本コストWACCがよく用いられます。WACCとは、簡単に言うと負債の調達コストと、資本の調達コストを加重平均したものです。(詳細はWACCとはを参照ください)
負債調達コストは負債の金利の関数になっていて、資本調達コストはリスクフリーレートすなわち長期国債金利の関数になっています。この2つは、当然市場の金利(例えばTIBOR)が上がれば、上がります。
■株価減少幅の予測
TIBORは、日経新聞に記載されているので、簡単に入手できます。仮にTIBORの上昇幅と同じだけ企業の資金調達コストが上がるとすれば、金利が上がったときに株価がどの程度下がるのかがわかります。
■補足
一般的に景気がよくなると、インフレにならないように金融の引き締めをして、逆のときは金融緩和をします(日本は今後者の状況です)が、その背景を数式を通してわかって頂けたと思います。
(もちろん、これはあくまで理論上の話であって、実際は金利が上がることで、必ずしも株価が下がるわけではなく、実際は金利変動に対して様々な要因が折り重なって株価変動につながることは補足しておきます。)