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財務諸表を見るときは、実態に照らして考えることが重要だということを前の日記で書きました。特に会計方針の変更があったときは、算出された利益を疑ってかかり、方針の変更がなかったとしたらどの程度の業績だったのかを把握することの重要性を書きました。(ちなみに会計方針の変更は有価証券報告書の財務諸表の注記に必ず記載されています。)
もちろん(本音が仮に利益操作だとしても)利益操作を目的とした会計方針変更は許されていないので、変更には正等な理由がつけられるはずですが・・・
さて、ここまで話の流れだと、利益よりもキャッシュ偏重というかたちに捉えられそうですが、決してそうではありません。一応利益というのは、会計原則のなかの「費用収益対応の原則(費用と収益はそれらの因果関係に即して計算すべきという原則です)」に則って計算されているので、利益という指標が我々に与える示唆は計り知れません。(そうでなければ利益計算そのものが不要ですからね・・・)それに他にも様々な決まりごとがあるので企業(特に上場企業)としても、むやみやたらと利益創出することはできません。
ただそれでも、利益は作られやすいものだという認識をもった上で、活用することを考えるべきです。特に株式投資をする場合は、PERやROEの計算の際に、本当に財務諸表のデータをそのまま使っていいのか?ものすごく良化しているように見えるが、何かこれまでとは違う前提はないか?を常に疑っておく必要があるでしょう。
さて、以前の日記で実態を表せているか疑わしい財務諸表(粉飾とは別です)や、大きな会計方針の変更があった財務諸表に対して我々投資家は何をしなければならないのか?という話をしましたが、その続編です。
答えから先に言うと、我々投資家がするべきなのは財務諸表の修正です。もし、大きな方針変更や実態を表しているか疑わしい財務諸表を修正せずに比率分析をしてもほとんど意味をなさないからです。
修正の例として、例えば実態を表せていない財務諸表については、不自然な科目や金額をきっちり再計算して適切な科目に割り振る必要があります。会計方針の変更があった財務諸表については、会計方針の変更がなかったものとして再計算する必要があります。多大な繰延資産が計上されている場合は、それが費用処理されていた場合に利益がどうなっていたかを再計算する必要があります。
そして修正した財務諸表に基づいて企業の収益性、安全性、効率性を見積ります。そうすると表向き財務諸表のうえでは、大きな利益成長をしているように見えても、実は大して成長していなとか、安全なように見えても実は安全性に問題ありだったといったことがわかる場合があります。
前に私は、「投資家は正確な財務諸表を作ることができる必要はなく、読めればいい」と書きました。では、修正のときは?というと、必要なのは完璧な正確性ではないので、傾向を読み取れるレベルで財務諸表を大雑把に修正できればよいわけです。
ところで、こうした会計方針の変更や実態を正確に把握できない財務諸表に対しても大きくブレない指標があります。
それはキャッシュフローです。利益が変化すればキャッシュフローも変化するかと思いがちですが、実際は他の科目で調整されてしまい、多くの場合は、「営業キャッシュフロー+投資キャッシュフロー」(いわゆるフリーキャッシュフロー)で見るとは変化しません。
これが「利益は経営者が作るもの」、「キャッシュは王様」と呼ばれる所以かと思います。
最近では、経営者が利益を作った例として日産のV字回復が有名です。これは、減価償却費の償却方法の変更や繰延税金資産の計上基準の変更によって大きな利益が生み出されたものと言われています。
こうした舞台を演出している方針変更があった場合は、従来方針で財務諸表を作成した場合にどうなるかを大雑把にでも把握しておくことが重要だと思います。(ちなみに日産は利益を生む前年に損失計上を前倒しして大幅赤字にした上で、翌年のV字回復を演出していました)
会計方針の変更は有価証券報告書で見ることができます。
「経営の実態を表していない財務諸表をどうするか?」の話は後日書くことにして、ちょっと非上場企業について書きます。
最近、いろいろなところで非上場(すなわち株式市場に上場していない)というワードを目にします。大手でいうと、ロッテやサントリーなどは上場企業ではありませんし、ここ1、2年の間に「すかいらーく」や「キューサイ」、「サンスター」などMBO(経営陣による企業買収)を実施して非上場化する企業も増えています。
上場することでは、市場から広く資金調達でき、常に市場(証券会社のアナリストやときには個人投資家)による経営のチェック機能が働くというメリットがあります。
一方で、ステークホルダーが増えることで経営に口出しされることが多くなり経営の自由度が低くなったり、ときには第3者に買収されるという危険にさらされたりするというデメリットがあります。
非上場企業になっている(あるいは非上場にした)企業を見ると、多くの会社が後者のデメリット、その中でも経営に対する自由度ということを気にしている様子が見受けられます。実際、株主(特にアナリスト)からは短期的な利益を要求されることが多いので、長期的に企業変革をしたい企業にとっては周囲のアナリストは大きな障害になることが多いようです。
(ちなみに、MBOにはファンドと組んでリストラ後に再上場して短期的利益を獲得する狙いのものあるようです。ただし、これは従業員にとっては自分の会社をマネーゲームの道具にされているようで、気分のいいものではないでしょう。)
企業の社会的責任を考えたときに、必ずしも上場は必要なものではないのでしょう。こういった非上場の事例を見ると、経営者は上場が真に従業員・顧客のためになるかを考えてから判断することが求められるものだと感じます。
個人投資家は、とかく上場企業を注目しがちですが、経営を考える上では、非上場企業から見習う点も多いのでしょう。
財務諸表は、一見すると数字の羅列ですが、その変化を見たり、競合他社との比較をしたりすることで経営の実態を把握することができます。例えばその企業は10年前に比べ資本構成を大幅に変えたとか、競合よりも粗利益率が高く高付加価値品を販売していそうなどということを知ることができます。
その財務諸表ですが、基本は一定の会計ルールにしたがって作成されるものです。しかし、会計方針やルールの解釈の仕方によって利益が変化してしまうという側面があります。減価償却や棚卸資産でどういった会計方針を採用するかによって見た目の利益は変化してしまいますし、資産計上するのか費用処理するのかといった考え方ひとつでも、利益は大幅に変わってしまうケースもあります。(売上は基本的に顧客が作るものですが、利益は経営者の意思で創出できる余地が大きいです。もちろん粉飾という意味ではなく)
当然、会計方針や資産計上・費用処理の方法は、会社の実態をできる限り正確に表せるものを採用するわけです。したがって、会計方針の変更は、会社の実態をより正確に表すためであれば決まりの上では何の問題もないわけです(ただし、企業会計原則に「継続性の原則」というのがあります。ここでは、会計方針をみだりに変更することを禁止しています。)それでも、ある年から急に会計方針が変わった場合は、その前後の関係性については注意深く見ておく必要があります。
また、会計監査が行われていない中小企業だともっと基本的なところで経営の実態を表せていないケース(これも粉飾とは違います)が多々あります。例えば減価償却を適正にできていないなどです。
では、こうした場合、我々投資家はどんなことをする必要があるのか?
続きは次回にします。
<参考>
財務諸表 会計方針による影響
一般的に競合他社というと自社にとって「敵」とする見方が多いかと思います。例えば、コンビニの場合、エリア内の顧客の絶対数の割りに軒数が何軒もあると、そのエリアは間違いなく激戦区になり限られたパイの食い合いになるでしょう。あるコンビニの向かいに競合店ができれば、そのコンビニの売上減少は必至だと思います。
しかし、競合というのは、ときにはメリットをもたらす「味方」となります。先のコンビニの例であれば、近隣の競合店は「敵」として認識されるケースが多いですが、これがアパレル関係だとどうでしょうか?例えば、セレクトショップが数軒立ち並ぶようなエリアがあるとします。
この場合、近隣の競合店は「敵」とは言い切れず、どちらかというと「味方」に近い存在だと思います。なぜなら、人はポツンと1軒だけ立っているセレクトショップに行くより、何軒も立っているところをグルグル見て回りたいからです。つまり、競合他社が近くにたくさんいることでシナジー効果が生まれるわけです。
この他にも競合が「味方」になり得る場合があります。例えば、ある新興国に先行して参入していたメーカーがあるとします。このメーカーの売っている商品は新興国にとって馴染みの薄いもので、これから市場を切り拓くことが重要であるとします。
この場合、このメーカーよりも規模の大きなメーカーが参入してくることは必ずしもマイナスにはなりません。規模の大きなメーカーがバンバン広告宣伝することで、最初に参入していたメーカーにも市場機会が広がるチャンスになるからです。
さて、このように競合は「敵」でもあり、同じ業界の「味方」でもあるわけですが、最近身近なところでも競合を「味方」と感じるものを発見しました。それが私の運営しているような個人サイトです。
私のサイトの相互リンクサイトはジャンルがかぶっていれば競合になり得るわけですが、実際はほとんど誰も競合として認知していません。もちろん、それぞれがお互いにない独自のコンテンツを持っているからということもあるのでしょうが、少なくとも個人サイトは同一ジャンルでリンクしあうことでシナジー効果が生まれると思っています。(このあたりはアパレル系に似ているでしょうか)
人は何かを調べるときに、同じジャンルのサイトが集まっているところに行きたがるのでしょう。私の場合でも1つのサイトを調べた「ハイ、終わり」とすることは少ないですしね。
今日は4月16日号の「日経ビジネス」で読んだ記事について紹介します。
問題把握や解決策検討の手法としてパレート分析というものがあります。これは横軸に要因・要素、縦軸に件数などのボリュームをとったグラフ(パレート図)から、ボリュームの多い要因をあぶりだして集中的に対策するための分析です。(参考:パレート分析)
従来型ビジネスはこのパレート図のなかのボリュームゾーンを重点的に取り扱うのが一般的でした。ところが、最近はテール部分をかき集めてビジネスをするパターンが増えています。
つまり、テール部分を限りなく長くして、従来のボリュームゾーンをはるかにしのぐ品揃えをしてビジネスを展開するわけです。代表例として、アマゾンがあります。アマゾンは、ニッチな本を膨大に扱うことで、店舗型における従来のボリュームゾーンをはるかにしのぐ売上を上げているわけです。これをロングテール現象といいます。
さて、ここからが記事の内容なのですが、どうやらこのテール部分の顧客というのは非常に購買意欲が高いそうです。例えば、ネットで「ゴルフ」と検索するボリュームゾーンに比べ、「ゴルフ+クラブ+(メーカー名)」などで検索するマイノリティの方が最終的にネットで買い物をする率が高いというわけです。
これは結構面白い考察で、直感的にも当たっていると思います。おそらく私のホームページの常連さんになるような人も、ニッチワードでたどり着いた人が多いと推測しています。(その前にどの程度常連さんがいるかはわかりませんが・・・)
この他にも、最近は正規分布ではなく、ベキ分布(簡単にいうと正規分布の両端が横に長い分布)のものが多いという記事がありました。その代表例が年収であったり、人口分布であったりするというわけです。
最近では「平均的な」というのが、その集団の代表的存在ではなくなりつつあるので、「平均」そのものに意味がなくなっているのではないかと思います。また、マジョリティである「平均な人」はあくまで平均で、魅力的なセグメントとはなりえないことも念頭においておくべきなんでしょう。
我々が普段、有価証券報告書等で目にする財務諸表は、財務会計の原則に基づいて作成されています。財務会計とは、投資家向けに適正な利益を計算することを目的とした会計です。
この財務会計とは別に税務会計というのがあります。税務会計とは、企業が支払うべき税金を計算することを目的とした会計です。
財務会計では、利益=収益−費用で計算しますが、税務会計では、課税所得=益金−損金で計算されます。利益と益金、費用と損金が同じものであれば特に問題はないのですが、実際にはそこに差異があります。
その差異には永久普遍に生じている永久差異と一時的に生じる一時差異があります。後者の一時差異があると、企業の純利益が税効果によって大きくブレてしまうので、税効果会計と呼ばれる処理をしてブレを修正します。
我々が(株式などの)投資の意思決定をする上においては、財務会計を理解していれば十分だと思いますが、税務会計の知識が少しあるとより企業の実態を正確に捉えることができるようになるのでしょう。自分で投資先の企業の財務諸表をいじる場合(例えば会計方針の変更があったときに、変更がなかったと仮定して利益の推移を自分で計算するような場合)にも考え方を知っておくだけでも役立つと思います。
余談ですが、これらとは別に、会計には投資の意思決定やコスト管理、収益管理などをするための「管理会計」というものが存在します。
<参考>
税効果会計
「青山マネジメントレビュー」の第11号に、最近は事業リスクを含む経営指標が重視されているという話が載っていたので少し紹介します。
80年代までは企業が重視する経営指標は、売上高や営業利益、経常利益といった収益の規模を示す指標が重視されていたのですが、90年代に入ってROEやROA、ROICといった資本効率を示す指標が重視されるようになってきたそうです。(私自身もROICに注意を払っています。)
投資家の中でも、これらの指標を重視して投資をしている人が非常に多く、今や四季報や株式情報サイトでは必ず出てくる指標となっています。
そんな中で、最近はリスクを含む指標を見る例が増えきているというわけです。その例として株主価値やEVA、RAPM(※)などがあるそうです。
ROEやROA、ROICがある期間の効率性を示す値であるのに対し、株主価値、EVA、RAPMいずれも事業リスクを反映した投資家の要求リターンである「資本コスト」を取り入れた指標です。投資家の影響力が強くなってきていることが、こうしたリスクを織り込んだ指標を重視させている要因だそうです。
こうしてみると指標は年々複雑になっていて、個人投資家が厳密に計算するのが大変になっている気がします。ただこうした指標が経営指標として活用されている以上、投資家としても厳密な計算はできなくとも、指標の意味するところを十分に理解しておくことが重要だと思います。
(※)RAPM(Risk Adjusted Perfoemance Measurement)とは、事業リスクの大きさに見合った収益性を測定するための指標で、RAPMの代表的指標としてSVA(リスク調整後付加価値=純利益−必要株主資本×ハードルレート(WACC)があります。